飲まない人も気をつけたい 肝炎と肝硬変のおはなし


飲まない人も気をつけたい 肝炎と肝硬変のおはなし

肝炎、肝硬変。お酒をたしなむ人であればこの病名を聞いたことはない人はいないと思います。特に、肝炎といえばウイルス感染が引き起こすB型、C型のイメージがありますが、近年、ウイルス感染もなく飲酒量も少ないのに、肝炎を発症、肝硬変、肝がんへと進行するケースが注目されるようになりました。果たしてその原因はなんなのでしょうか?

肝炎のおもな原因と症状

◆非ウイルス性肝炎が増加中、がん化の危険性も

肝炎は何らかの原因で肝臓に炎症が起こり、発熱や全身倦怠感などが生じる病気で、日本ではB型やC型などウイルス感染が引き起こす肝炎が全体の約8割を占めています。
非ウイルス性ではアルコール性肝炎が代表的ですが、90年代頃から、飲酒量が適量以下であるのに脂肪肝から肝炎を発症、その後肝がんへと進行するケースが増加し問題になっています。
現在、検診で肝機能障害を指摘される方の10人に1人が、この「非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)」の可能性があると言われています。
患者数はおおよそ100~200万人で、そのうち2~3割が約10年で肝硬変や肝がんへ進行すると推測されます。実は、非ウイルス性肝炎から肝がんを発症して亡くなる方の数は、すでにB型肝炎による肝がん死亡者数を超えているのです。

◆脂肪肝に酸化ストレスが加わり、肝細胞をキズつける

NASH(非アルコール性脂肪性肝炎)とはどんな病気なのでしょうか。
まず、内臓脂肪肥満、2型糖尿病、高血圧症、脂質異常症など”メタボ体質”を背景にして、肝臓に中性脂肪が過剰に蓄積され「脂肪肝」の状態が続きます。この脂肪肝に活性酸素による酸化ストレス、インスリン抵抗性による脂肪酸のβ酸化の促進、鉄、炎症性サイトカインなどが複雑に作用し、肝細胞をキズつけて炎症と線維化が生じ、NASHへ進展すると考えられています。

脂肪肝の時点では「経過観察で様子をみる」という医師も少なくありませんが、NASHの可能性を考えるならば、積極的に治療を始めた方がよいかもしれません。

治療方法とセルフケア

◆肝機能検査値に異常があったら、肝炎ウイルスの検査を受けて

積極的な治療には適正な診断が大切です。定期検診で肝機能検査値の異常を指摘されたときは、まず肝炎ウイルスの検査を受けましょう。
ウイルスの感染があれば、その治療が最優先されます。
ウイルス性肝炎が否定された場合は、問診や血液検査で詳細に肝機能を調べますが、専門医療機関ではNASHで低下する血小板数の値や肝臓の線維化がわかるヒアルロン酸やⅣ型コラーゲン数値など、特別な検査も受けられるので、初めから一般内科ではなく、専門医を受診した方が安心です。
一連の検査からNASHの疑いが濃くなると、脂肪肝の原因となる肥満、糖尿病、高血圧症、脂質異常症、メタボ体質等の有無を精査し、肝機能の悪化を抑える薬に加え、高血圧症や脂質異常症を改善する薬やビタミン剤を組み合わせた治療が行われます。そして何よりも、NASHを悪化させる3大要因(糖化、酸化、鉄化)を避け、食事療法で改善することが重要なのです。

◆NASHの3大悪化要因は食事療法で改善を

NASHを悪化させる3大要因は「体の糖化とメタボ体質からくる脂肪の蓄積、活性酸素による酸化、肝臓への鉄の蓄積」です。

GI値の高い食品例
食パン95/じゃがいも90/白いご飯88/チョコレート91|GI値の低い食品の例/玄米55/鶏肉45/キャベツ26/そば54/まぐろ40/ほうれん草15

(1)メタボ体質改善にはGI値の低い食品
メタボ体質は単なるカロリー制限ではなく、血糖値の急激な上昇を防ぐグリセミックインデックス(GI値。食品を摂取した際に血糖値が上昇する速度を表したもの)の低い食品を摂ることで改善されます。
GI値は一般的に、野菜や海藻、肉や魚などは低く、炭水化物が高くなっています。パンは白いパンよりは全粒粉のもの、ご飯は白米よりは玄米のほうがGI値が低いのでおすすめです。チョコレートなどのお菓子や、じゃがいもなどのいも類も高GI値なので注意が必要です。

(2)活性酸素には野菜のファイトケミカル
活性酸素については、ポリフェノールなど植物がつくる強力な抗酸化物質であるファイトケミカルを摂りましょう。ファイトケミカルは野菜に多く含まれているため、野菜スープなどで摂るのがおすすめです。

(3)鉄分の摂りすぎ・ため込みすぎに要注意
鉄については、ここ十数年の研究で肝炎との関連がわかってきました。鉄は肝細胞内で代謝される過程で非常に毒性の強い活性酸素を発生させ、肝細胞の破壊に一役買うばかりか、DNAをキズつけてがん化を促進します。
そのため、例えばレバーや赤身肉は鉄分が多いので鶏肉に置き換える、昔から肝臓に良いといわれてきたシジミ汁もスープだけ飲んで、鉄分豊富な身は食べないなど、肝臓に不安がある方は注意する必要があります。

また、下記の5カ条を参考に、鉄をため込まない生活を心がけましょう。

鉄をため込まない5カ条
1 穀物は玄米、大麦など全粒タイプにする(鉄の吸収を妨げる)
2 運動をしたり、献血をする(汗や血液で鉄分を体外へ排出)
3 赤身の肉を控える(赤身肉に含まれるヘム鉄は吸収が良い)
4 ビタミンCの過剰摂取に注意(ビタミンCは鉄の吸収を促す)
5 アルコールを控える(アルコールは貯蔵鉄を増やす作用がある)

肝臓の生活習慣病ともいわれるNASH。その数は今後ますます増えると考えられます。身体と家計にやさしい食事療法でぜひ、発症予防につとめてください。


カテゴリー: 二日酔いの基礎知識